「口座開設時における特別永住者証明書の提示強制は人権侵害」日弁連見解について - 一般社団法人在日コリアン・マイノリティー人権研究センター

記事詳細

「口座開設時における特別永住者証明書の提示強制は人権侵害」日弁連見解について

【投稿日】2026年4月15日(水)

 在日コリアンの特別永住者が銀行口座を開設する際に特別永住者証明書の提示を求められるのは不当だとして、日本弁護士連合会(日弁連)がりそな銀行と金融庁に対応の改善を求める要望書を出した。
 申立人は在日コリアン3世で、2021年に運転免許証を提示して口座開設を申し込んだが、特別永住者証明書の提示を求められ、それを拒むと口座開設を断られた。日弁連は、特別永住者は日本社会に定着しているにもかかわらず特別永住者証明書の提示を一律に求めることは、日本国籍者との差別を強く意識させ、個人の尊厳を侵害する恐れがあると指摘した。
 りそな銀行はマネーロンダリング対策として在留期間確認が必要であるためとしたが、みずほ銀行やゆうちょ銀行は証明書提示を求めていないことから必要不可欠な手段とは言えないとして、りそな銀行に運用の見直しを求め、金融庁には各銀行への周知を要望した。りそな銀行は今後の対応を検討するとしている。
 本件について長年に亘り在日コリアンの本人確認問題について取り組みをおこなってきたKMJとしての見解も明らかにしたい。
 まず日弁連がまとめた「銀行口座開設における特別永住者証明書の提示に関する人権救済申立事件 調査報告書」(2026年2月19日)では、本件に対して次の通り指摘している。

①特別永住者には憲法13条(個人の尊重)に基づき正当な理由なく日本国籍者と別異の取り扱いを受けない権利があること
②特別永住者は、憲法第14条(法の下の平等)並びに自由権規約及び人種差別撤廃条約が保障する国籍を理由に差別されない権利を享有すること

以上から特別永住者に対して以下の理由で、特別永住者証明書の提示を求めることについては特別な配慮が必要であるとする。

①特別永住者はかつて外登証の常時携帯義務を負うていたが、それは日本国籍者と同じく期間の定めなく日本社会の一員として日本国内に生活基盤を置くものでありながら、日本国籍者と異なる立場であることを意識させ、社会において安心して平穏に暮らすことを阻害するものであるとして、2012年の出入国管理及び難民認定法の改正によって、常時携帯義務が撤廃された。このような歴史的背景に照らすと、特別永住者証明書の提示を求めることは、日本国籍を有する者とは立場が異なる者であることを強く意識させるものであり、日本国籍者と別異の取り扱いを受けない権利を侵害するおそれがあるだけでなく、憲法13条の保障する個人の尊厳または人格権を侵害するおそれのある行為であること。
②銀行に契約締結の自由が保障されているとしても、銀行は公共性を持ち、かつ企業の社会的責任として他者の人権を尊重しなければならず、よって銀行が、特別永住者に対して、正当な理由なく、日本国籍者と別異の取り扱いをした場合には、人権侵害となる。
③金融庁が在留期間の定めのある外国籍者の銀行口座について、在留期間に応じた管理をすべきとの指針を示してはいるが、日本国籍者と比較して外国籍者は一般にリスクが高いとの判断を示しているわけではない。そして日本国籍者にたいして、その国籍や在留期間がないことを、証跡を示して明らかにすることも求めていないのであるから、日本国籍者と同じく在留期間がなく、日本に生活基盤を有する特別永住者についても、日本国籍者と同様の本人確認書類の提示があれば足りることになる。
④特別永住者証明書の提示を一律必須としないという取り扱いでは、在留期間の定めのある外国籍者が特別永住者であると虚偽申告した場合に不都合が生じるとの指摘もあるが、それは日本国籍者であると虚偽申告した場合も同様のリスク要因または疑わしい取引行為の一つとして捉えられるべきものである。もし、特別永住者であるとの虚偽申告の可能性のみを特別に取り上げて問題視するとすれば、それ自体、無意識的な特別永住者に対するまたは国籍に基づく差別の表れに他ならない。

 日弁連の指摘は、特別永住者の歴史性、社会性に配慮し、かつ昨今の国際人権の考え方に則った適切なものであると評価したい。特に特別永住者は日本国籍者と同様の立場であるとして、日本国籍者はその国籍を確認されないのだから、特別永住者にたいしてもそうすべきであるとする論理は実に明快である。あえて付け加えるなら、特別永住者は、日本による朝鮮植民地支配の結果、日本に定住することになった者たちとその子孫という一般の外国人とは違う特殊な存在であることだ。その責任の所在は日本国家にある。にもかかわらず、日本政府は一方的に彼/彼女らから日本国籍をはく奪し、外国人として不安定な法的地位に置き、国籍や民族的出自を以てさまざまな差別的取り扱いを行ってきた。そして指紋を押捺させ、それが記された外登証を常時携帯させた。当時の在日コリアンにとって、外登証は「犬の鑑札表」であり、屈辱的なものであるとして、その後、指紋押捺拒否運動などを通じて、それに抵抗したのである。そのような背景をもつ外登証はけっして他人に見せられない、見せたくはないものだったのである。そのような歴史性から特別永住者は、特別な配慮が必要な存在であることを付け加えておきたい。

 本件、申立人が特別永住者であったので、特別永住者の立場からの主張となっているが、一般永住者はじめ日本に在留するすべての外国人にも適用しなければならないだろう。三井住友銀行が、外為法上の居住性(銀行口座の開設にあたり外国人は原則、6ヶ月以上の在留が必要)の確認にあたり、在留カードの提示にこだわらず、社員証などの提示、勤務先への架電等によって就労実態を確認するなどの方法などを提示している。在日外国人の人権に配慮した対応であるといえるだろう。

 このように、在日外国人にたいする本人確認のあり方は、銀行がその人権に配慮できるかにかかっている。一律に特別永住者証明書や在留カードの提示をもとめる必要はないことは明らかであるので、改めてKMJが示す在日外国人の本人確認にかかわる基本原則は日本人同様、①名前(氏名)、②住所、③生年月日が記載された有効期限内の公的書類であれば、運転免許証でも、マイナンバーカードでもよしとする。もっとも本人の意思で特別永住者証明書や在留カードを提示することには何ら問題ない。それらを強要することが問題なのである。

 1993年に某銀行が在日コリアンの口座開設時に、外登証の提示を強要したことを当時のKMJ関連の運動団体が問題視し、改善させた。以降、その運動団体が中心となって、他銀行、損保、生保、電話契約など、さまざまな契約場面での本人確認時における外登証提示を改めさせ、各業界でもそのような取り扱いはしないことが定着していた。しかし、時が過ぎ、担当者が代わり、また在日コリアン以外の外国人が増加していったことで、本件が風化していっているように思える。そんな中で、本件が日弁連によって改めて問題視され、的確な指摘が行われたことは非常に意義があった。
 りそな銀行はぜひこの指摘を真摯に受け止めて、原点にかえり、外国人にたいする本人確認のあり方について、その人権に配慮した方法をもって実施していただきたい。