ゴルフ会員権をめぐる裁判  日本国籍取得者でも排除 - 一般社団法人在日コリアン・マイノリティー人権研究センター

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ゴルフ会員権をめぐる裁判  日本国籍取得者でも排除

【投稿日】2023年5月17日(水)

 元韓国籍の出自を理由にゴルフクラブから入会を断られ、精神的な損害を被ったとして、三重県桑名市の40代男性が昨年5月17日、岐阜県可児市の「愛岐カントリークラブ」を相手取り、慰謝料など330万円を求める訴訟を津地裁四日市支部に起こした裁判で、今年4月19日、裁判所は男性の請求を棄却した。私的団体であるゴルフクラブが元外国籍であることを理由に入会を拒否することに違法性はないと判断した。判決理由で升川智道裁判長(日比野幹裁判長代読)は、「元外国籍であることが入会拒否の唯一の理由ではない」というクラブ側の主張を退け、入会拒否は元外国籍であることが理由だと認めた。一方で、クラブは会員となるために正会員2人の紹介と理事会の承認を得る必要があるなど「会員同士の人的つながりが強い閉鎖的かつ私的な団体」だと指摘。「平等の権利への侵害の程度は憲法の趣旨に照らし、社会的に許容しうる限界を超えるとは認められない」とした。未だに外国籍者や女性の入会を拒否するゴルフクラブが存在することは知っていたが、まさか日本国籍取得者まで排除するクラブがあることには驚いた。

 ゴルフ会員権の国籍条項をめぐっては、2001年7月、千葉県にある千葉カントリークラブの会員権購入をめぐり韓国籍であることを理由に入会を拒否された男性が裁判に訴えたが、最高裁は「国家が私的な社団に介入できるのは、結社の自由を侵してまでも保護すべき重大な侵害があったとき」として、ゴルフクラブ入会に国籍条項によって制限を与えるのは、社会的に許容される範囲」とした地裁判決を支持。「外国籍であることを理由に入会を拒否するのは憲法違反にはあたらない」との判断をくだした。今回の「愛岐カントリークラブ」をめぐる裁判はこ判例に基づいたのであろう。20年を経ても、日本社会の民族差別に対する人権意識は少しも向上していないということだ。

 ゴルフジャーナリストの金田武明氏は、当時(2001年)の最高裁の判断を、「日本のゴルフクラブの実態から、国際的に見ても、時代遅れの判決」であり「もちろん好きな仲間の集まりである私的団体では、どんな会員を集めようと自由」だが、「果たして日本に私的団体と呼べるようなクラブがどれだけあるの」か。「ほとんどのゴルフ場は会員制を謳いながらビジター制限はほとんどなく、むしろビジター収入に頼っているのが現状。仮に厳格なプライベートクラブであっても、諮問委員会で、この人はメンバーに相応しいかどうかイエスかノーかだけ判断すればいい。入会条件に国籍を問うなど、欧米のクラブでは考えられないこと。それだけ日本の公民権意識が低いことの証明といえる」と厳しく指摘した。まさにその通りである。会員にふさわしいかどうかは、国籍や性別ではなく、その人物の人柄で判断すればよいのである。すべての人権問題に通じることである。

 本件は、「国籍」のみならず「出自」までも否定する重大な民族差別事件である。その背景には、日本による朝鮮植民地時代に日本国籍をもつ朝鮮半島出身者を徹底的に管理・抑圧した根深い差別意識がいまだに克服されていないことにあるといえる。

 外国籍者が日本国籍を取得する背景は様々だが、多くは差別から逃れるためだ。いまだに出自を隠さざるを得ない状況にあるからだ。今回の男性は、知人に自身の出自を説明するのがほんとうに辛かったと話す。なぜ辛かったのか。今回の問題の本質はここにあると思う。(高敬一)