日本人と外国人 - 一般社団法人在日コリアン・マイノリティー人権研究センター

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日本人と外国人

【投稿日】2014年3月17日(月)

国籍は所与のものか
                      
 私は各地での講演などで、最初に「あなたはどうして日本国籍をもっているのですか」と尋ねることがある。その問いに対する答えの正答率は3分の1からよくて2分の1である。つまり多くの日本人は国籍を所与のものとして、それが血統にもとづくものか、生まれた地によるものか、を考えなくてもすむ環境にいる、ということがわかる。そして憲法でも定義としては「日本国民たる要件は法律の定めるところによる」(第10条)としているが、その法律たる国籍法は一般の日本人にとってはその内容や適用は日常生活において問題となるようなことは通常ありえない。

「外国人とは」

 また「日本人とは日本国籍を保持している者である」とは認識していても、「外国人とは」という問いに対して、正しい答えを期待することは難しい。なにが難しいかといえば、法律の上で「日本国籍をもたない者」が外国人である、という法律論上の問題がそこにあるからである。「外国人」という場合は単なる国籍の有無だけでなく、容貌、生地、言語などさまざまな文化的要素を含む。かつては欧米系の人をさして「ガイジンサン」という呼称がよく用いられ、その呼び方には一種の羨望と、日本社会には同化しようのない人びとと印象づけられていた。

 

日本人?外国人?

 近年は国際結婚がおおくなったきた。ダブル、ダブルの子などの増加は著しい。彼・彼女らは「日本人」なのか、「外国人」なのか。また大日本帝国の植民地時代に日本に渡航してきた朝鮮半島、台湾出身の2世、3世以下の世代のようにほぼ完全に日本社会での生活が固定的となり、言語生活をはじめとして日本文化そのものを体現する人びとは、果たして「外国人」なのだろうか。さらに著名な日本研究者であるドナルド・キーン氏のような並の日本人では太刀打ちできない学者も出始めている。ちなみにこの人は昨年、日本の永住を決意して日本国籍を取得した。

 

問題は人権

 問題は旧植民地出身者がいまだにまっとうな人権や生活上でのさまざまな差別を被っていることであり、またいわゆるダブルの子たちが受けている日常の差別や偏見のまなざしである。「在特会」などのヘイトスピーチはそれらの差別や偏見を公然として叫び、差別・偏見をさらに日本人の多数世論にしようと意図している。いいかげんなマスコミの記事や報道もそれを助長している。このような事態を放置していてよいのだろうか。私たちはどのように抗えばよいのだろうか。ひとりひとりにそのことが問われている。(仲尾宏)