在日コリアンを無視した住民投票は無効である - 一般社団法人在日コリアン・マイノリティー人権研究センター

記事詳細

在日コリアンを無視した住民投票は無効である

【投稿日】2015年5月12日(火)

 5月17日に大阪市を廃止して5つの特別区に分割するという『大阪都構想』の住民投票が行われる。告示されて以降、連日、賛成派・反対派の街宣車が走り回っている。先の地方選挙でもそうだったが、この期間はいつも疎外感に苛まれる。

 今回の住民投票は、大阪市の地域特別区設置法(都構想法)に基づいて実施される。都構想法は公職選挙法の地方自治体選挙の規定を準用しており、住民投票には20歳以上の日本人の大阪市民にのみ投票権が与えられることになっている。しかしこんな大切な住民投票に、在日コリアンを排除するとは信じられない。

 大阪市の人口約268万人のうち特別永住および一般永住の在留資格をもつ外国人は約8万人。特に生野区は約2万3800人が住んでおり、生野区人口のほぼ20%を占めている。生野区に限ってみれば、この20%の民意を無視することになるのである。

 在日本大韓民国民団大阪府地方本部が「コリアタウンを観光地化したいといいながら、住民投票から永住外国人を除外するのはおかしい」との声明を発表したが、大阪維新の会の幹事長である松井一郎大阪府知事は記者団に「(法的に)選挙と同様に取り扱うので仕方ない」と説明。また「行政に言うべきことを確実にしていきたいなら(日本)国籍を取得することも良いのではないか」との認識を見せた。

 一方、永住外国人を含めた住民投票条例の制定をめざしている北海道苫小牧市はその理由を次のようにあげている。「地方自治法第10条では、市町村の区域内に住所を有する者を当該市町村の『住民』としている。この『住民』は、外国人も含まれている。これは、市町村の区域内に生活の本拠である住所を有する者を『住民』とするという考え方であり、国籍の如何を問うものではないことによる。日本人住民と同様に、外国人住民についても市との関わりにおいてまちづくりに関係する存在であることから、まちづくりに参加することができる。そのため、本市の区域内に住所を有する外国人住民についても、住民投票の権利の対象者とする」としている。松井知事とはまったく逆の発想である。この認識の差はいったい何なのだろうか。

 1998年に策定された『大阪市外国籍住民施策基本指針』は、外国籍住民の地域社会への参画をめざし「外国籍住民の意見を市政に反映できる方策について検討します」と謳っている。まさに住民投票は絶好の機会であったはずだ。そのことを指摘し、問題視した大阪市会議員はどれほどいたであろうか。

 わかってはいたが「外国人も住民です」との指針もスローガンもただの綺麗事に過ぎないことが、大阪市の姿勢であることが再確認できた。しかし、それでも私は大阪市民であることに拘りたい。だからこそあえて言う。私を無視した今回の住民投票は無効である、と。そこで出された結果は到底承服できない、と、言い続けていきたい。(K)