平和な世界を築くために - 一般社団法人在日コリアン・マイノリティー人権研究センター

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平和な世界を築くために

【投稿日】2017年10月12日(木)

 昨年ドキュメンタリー映画『花のように あるがままに』の主演をさせていただきましたが、本当の意味での主役は在日一世のアボジ(父)ペハッポンでした。アボジの生き様そのものが、わが民族の悲しい歴史の1ページであると思います。アボジが徴用工として、岐阜県各務原市で掩体壕(飛行機の格納庫)の建設に従事させられたことが、Sai77号の「シリーズ小さな旅 第29回 愛知・岐阜で生きてきた朝鮮人」(p69~76)で紹介されています。戦時中強制的に日本へ連行された朝鮮の人たちは北九州や北海道、サハリンの炭鉱や鉱山だけでなく、日本各地の地下工場、地下軍事施設の建設、軍令工場などで働かされたとありました。私のアボジ・ペハッポンが、各務原の掩体壕の中で遠く離れた故郷を想い、年老いた両親の姿を思い浮かべて歌った歌が今も脳裏を離れません。

 今年、第20回KMJフィールドワーク琵琶湖をめぐる日朝関係史(古代から現代)にKMJ理事になってから初めて参加しました。研修旅行に加えていただき、今まで以上に私の精神は高鳴り、勉強に対する熱意が高まりました。

 わがアボジもやりたいこと、やらなくてはならないことがたくさんあったはずです。過去の歴史の中で不幸にも刀をふりあげられた時代を生きなくてはいけなかったアボジの思いを紡ぎたい、語りたい…と強く思いました。

 私は11月18日に開催される『朝鮮通信使ゆかりのまち全国交流会京都大会』で、舞踊劇「朝鮮通信使が京都にやってきた」を担当することになりました。朝鮮通信使関連資料がユネスコ記憶遺産に登録申請され、もうすぐ結果がでます。そのお祝いもかねた記念イベントになることでしょう。私は昨年から温めてきた台本、演出を企画してきました。今から400年前に、朝鮮通信使は京都で国書を交換しました。その時人々は平和の大切さを改めて感じたことでしょう。その当時の情景を舞台劇として再現します。
 朝鮮通信使は、両国が互いに相手を尊重し対等の立場で交流を継続しようとする強い意志のもと実現されました。朝鮮通信使ゆかりの人物である雨森芳洲が語った「互いに欺かず、争わず、真実を持って交わることこそ誠信である」という『誠信の交わり』こそが、韓国・朝鮮や隣国、世界の国々との平和を守っていける信念だと舞踊劇の中で伝えることができたらと思っています。

 世界は今でも争いや差別が絶えません。近隣の国々との関係も良好とは言えません。しかし必ず平和な世界にしなくてはいけません。これからの若い世代に平和な世界を残せるように、そして亡き父に、「平和な世界になったよ。」と報告できるように。
微力ながら、無償の愛で平和を願って活動していきたいと思います。(裵梨花)