今回の衆議院選挙で改めて感じたこと - 一般社団法人在日コリアン・マイノリティー人権研究センター

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今回の衆議院選挙で改めて感じたこと

【投稿日】2017年11月7日(火)

 選挙の度にいつも感じることではあるが、今回の選挙にいたる経過や結果にたいしてあまりにも危機感を抱いたので、雑感という形で書いてみた。少々愚痴っぽくなるかもしれないところはご了承いただきたい。

 さて、ご承知のとおり私には選挙権がない。生まれてこの方投票したのは学級委員の選挙くらいか。いまは国籍国である大韓民国の国政選挙にたいする選挙権がある。だが一度も行使したことがない。これを獲得するために尽力した在日2世の諸先輩たちには申し訳ないが、したいと思わない。してしまうと、自分が「在日」でなくなる気がするからだ。日本社会にとってもその方が都合が良いかもしれない。

 「在日」が「在日」たる由縁は日本の朝鮮植民支配の歴史にあるわけで、それがあやふやにされてしまう気がする。日本社会にとっては好都合だ。「在日」の人権問題は「外交」問題ではなくあくまで日本の「国内」問題であるはずだが、「在日」が韓国の選挙に参加してしまうと「外交」問題にされてしまいそうでならない。日韓・日朝の交渉が過去なんども行われてきたが、それではたして「在日」にたいする差別はなくなっただろうか。最近はますます酷くなっているではないか。

 それなら「日本国籍」を取得するという選択肢もあるが、それを私は選択肢とは思えない。まだまだそうせざるを得ない状況があるからこそ「帰化」するわけで、本当の意味での、どちらの国籍を保持していても人権が保障されるような社会になってこそ、はじめて選択肢となるように思う。そうなったとき、私も日本国籍を「選択」してもいいかなと思うが、今回の選挙をみていると(今回だけではないが)そういう社会はしばらくはこないだろうと感じる。

 藤原史朗さんが選挙のたびに「その結果で最も悪影響を受けるのが、選挙権のない在日のみなさんだ、ほんとうに申し訳ない」と言ってくださる。選挙の度に疎外感を感じている私にとっては、とても暖かい言葉で慰められている。多くの日本人がそう思ってくれる日はくるのだろうか。

 今回の選挙でもっとも危機感を抱いたのは、もちろん与党の圧勝もあるが、前号でも紹介した小池百合子の登場だ。踏み絵として示された「永住外国人への選挙権付与に反対」には衝撃を受けた。いま、ほとんどの政治家はそういう思想だろうが、それをむき出しにしたのは小池が初めてではないか。あれを示されたときに、もう、外国籍を保持したまま地方参政権を得る道は完璧に閉ざされたのではないかと感じた。幸い小池は大敗北したが、多くの日本人は外国人参政権の反対については共感したのではないだろうか。こうなった以上、私はどうすればいいのだろうかと考えた。いまこそ、もう一度、地方参政権獲得運動を盛り上げるべきだと思うし、朝鮮学校を守るために選挙権を獲得しようと、朝鮮総連関係者にも訴えかけて、オール「在日」で運動すべきではないか、と考える。しかしそれも絶望的か?ならば、私が払っているあらゆる税金から、選挙にかかる費用や政党交付金分などを返済して欲しいと裁判でもするか。しかし、それも消極的か?いっそうのこと日本国籍を取って、積極的に日本社会にかかわるか?もう、それしかないのではないかと思う。 

 でも「在日」は特殊なのだ。できれば国籍を変えることなく、日本社会の正式な一員として責任を果たしていきたい・・・やはり、最後はもとに戻ってしまった(笑)。「在日」社会も真剣に議論しないといけない時期にきていると思う。(高敬一)