これからの若い世代に期待 - 一般社団法人在日コリアン・マイノリティー人権研究センター

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これからの若い世代に期待

【投稿日】2018年3月16日(金)

 仲尾宏理事長が共編『ユネスコ世界遺産と朝鮮通信使』(明石書店、2017年12月)を出版されたことから、2月26日にウエスティン都ホテル京都にて、記念パーティーが執りおこなわれた。主催は「仲尾先生出版記念パーティー実行委員会」。当日は、河泰允韓国駐大阪総領事をはじめ、韓国民団、政治家、行政関係者、研究者など70名近くが出席した。

 仲尾理事長は出席者に感謝の意を伝え、以下のようにあいさつされた。「ユネスコの世界記憶遺産登録に値する物は、いわゆる文書や絵画など記録されたものであるため、朝鮮通信使関連でいえば、外交の記録、旅程の記録、文化交流の記録がそれに相当しました。今回の登録申請活動は2012年に、韓国の釜山で開かれた『朝鮮通信使全国交流大会』の会場で韓国の釜山文化財団から近未来にその登録を日韓共同で実現したい、という提案からスタートしました。それを受け、日韓で学術委員会が発足し、合同でその選定作業にあたりました。その中で、当時は対等な外交関係があったことを再確認できました。また、朝鮮通信使縁(ゆかり)の地で、その見直しが進められたのも意義がありました。
 そして何よりも政府レベルではなく、日韓の民間団体が合同で選定作業を行い、申請したことに大きな意義がありました。申請は、釜山文化財団の提案からスタートしましたが、韓国ではこの申請に否定的な意見も多数ありました。朝鮮通信使が単なる文化交流として認識されていたことや、明治以降の日本では朝貢使扱いされていたことが大きな原因でした。また、日韓合同学術委員会でも、朝鮮通信使の研究にかかわってきた視点の違い、書画に書かれた人物の歴史的評価や通信使そのものの史的位置づけの違いから、意見が大きく対立することもありました。しかし、それらを双方が歩み寄ることで乗り越え、最終の成案に到達することができたこと、双方が主張の違いを認識し、その克服を今後の課題としたことも、大きな意義がありました。
 このたび、朝鮮通信使の記録が世界史的価値を有する人類の普遍的遺産であることが認められました。その結果として期待したいことは、若い世代の中から、朝鮮通信使の研究に携わる人びとがたくさん出てきてほしいことです。そして若い世代が朝鮮通信使研究にかぎらず、日韓間にある対立するあらゆる歴史的事象にたいして、率直に意見交換をし、深化させ、歩み寄るといった作業を重ねてほしいと思います。そうすることでお互いの人権が尊重され、守られていくものと思います。」

 このたび出版された本は、①ユネスコ世界記憶遺産登録、経緯と意義②日韓市民の相互理解から世界記憶遺産への道③朝鮮通信使ゆかりの地と登録資料④ユネスコ世界記憶遺産登録資料ガイド、の4章からなり、登録に至る過程やその意義、日韓双方の葛藤やそれを克服した歩みなどがわかりやすくまとめられている。ぜひお手にとっていただきたい。

仲尾宏・町田一仁 共著
初版2017.12 第2版2018.2
明石書店 定価1600円(+税)

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