関空税関による神戸朝高生お土産没収事件 - 一般社団法人在日コリアン・マイノリティー人権研究センター

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関空税関による神戸朝高生お土産没収事件

【投稿日】2018年8月8日(水)

 6月28日、朝鮮への修学旅行から帰国した神戸朝鮮高校の生徒たちが、関西空港の税関で、親戚や友人からもらった土産物を大量に没収されるという事件が発生した。62人の生徒たちに対して税関は全員のスーツケースや鞄を開け、土産物・民芸品などを押収した。その際、生徒たちは声を上げたり涙を流して説明や抗議をしたが、税関職員は頑なに放棄書へのサインを要求したという。税関から最後の生徒が出てきたのが0時半。土産物を没収され泣きじゃくる我が子を見て、迎えに来ていた保護者は怒りを禁じえなかったという。

 こういう事件があると、「制裁してるから没収は当然」とか「朝鮮学校側の対応が悪いからだ」という人たちがいるが、神戸以外の朝鮮高校の修学旅行では、問題なく土産物を持ち帰れたそうだ。そもそも日本人の朝鮮への旅行者は普通に土産物を持ち帰っていることからも、今回は明らかに異常事態であり、非人道的・民族差別事件である。

 朝鮮総連は翌日(29日)、日本政府に抗議する会見を開き、「非人間的な措置をやめるべきだ」と主張した。また、「高校無償化」からの朝鮮学校排除に反対する連絡会は、1週間で7628名の個人・団体からの賛同署名を集め、7月19日、参議院議員会館において、経済産業省の外国為替担当者、財務省財務課担当者、内閣官房担当者に対して、子どもたちへの謝罪、お土産品の返還と二度とこのようなことが事態が起こらないことを求めて話し合いを持った。その報告によると、「日本独自の制裁措置をきちっと実施しているかという官邸からの締め付けがある中で、役人の立場として現場判断をせざるを得ない苦しい胸の内を、言外に感じ」たとある。

 今回の没収事件が異常事態であり、非人道的・民族差別事件であるという理由は次の通りである。

 一つはこの行為には法的根拠がないということだ。朝鮮への制裁にかかる輸入規制の法的根拠である外為法に基づいた輸入貿易管理令によれば、「個人的使用に供せられ、且つ、売買の対象とならない程度の量の貨物」は輸入規制の対象外となっている。つまり今回のように税関が個人の土産物も含め朝鮮からの貨物は一切持ち込み禁止だと言うのなら、それは法の範囲を超えた拡大解釈ということになる。そもそも土産物の持ち込みが本当に違法なら、淡々と没収すればいいだけだ。それをせず、泣いて懇願する生徒たちに無理矢理放棄書への署名をさせたのは、法的根拠がないからこそだろう。放棄書を取っておけば、後で問題になっても生徒たちが任意に放棄したのだと言えるからだ。

 もう一つは、輸出入の禁止措置はどちらにも「人道目的等に該当するものについては、措置の例外として取り扱うものとする」としていることだ。ならば土産物程度なら当然、例外扱いにするべきで、関空税関でも、これまで朝鮮学校生徒も含めて朝鮮への旅行者の土産物にたいしては、そのような措置をとってきたはずである。にもかかわらず、突如、神戸朝高生のみに、“非人道的”扱いをおこなった意図はなんだったのか。その背景には昨今の南北会談や米朝会談などによる朝鮮半島の平和ムードを快く思わない日本政府が、朝鮮への独自制裁を引き続き強硬に行っていくという意思表示のために、朝鮮高校生徒たちを見せしめに利用したと考えられる。

 言語道断である。今回の関空税関の行為は、生徒たちがもつ朝鮮とのルーツを政治的意図で攻撃し、生徒たちの人権を大きく侵害した国家による民族差別事件である。日本政府はただちに生徒たちや関係者に謝罪し、押収した土産物を返却、二度とこのような事態を起こさないための措置を講ずるべきだ。(高敬一)