これからの在日運動は何をめざすべきか - 一般社団法人在日コリアン・マイノリティー人権研究センター

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これからの在日運動は何をめざすべきか

【投稿日】2018年9月10日(月)

 在日コリアン社会がもはや3世・4世が中心となり、国籍も志向も多様化している中で、これからの在日運動は何を目指していくべきか。「教育」と「市民権獲得」の2点から私の考えを述べたい。

 私は在日本大韓民国民団(韓国民団)における権益擁護運動に長年たずさわり、KMJで学んだ運動理論や実践を、韓国民団大阪府堺支部の活動に活かしてきた。特に成果をあげているのが、堺市内全域の幼小中高に通う、韓国・朝鮮にルーツをもつ子どもたちを対象とした「ハギハッキョ」(夏期学校)を堺市教育委員会と協力して推進していることだ。そこに参加した子どもたちは、民族文化に触れるだけでなく、堺市内全域の同じルーツをもつ仲間たちと出会うことで勇気づけられている。一方、あらゆる国籍の子どもたちを対象とした「チュギハッキョ」(秋期学校)もある。現在は「ワールドハッキョ」と名称を変え、日本人児童も含めたすべての子ども達が異文化体験学習できる場となっている。日本に住むあらゆるルーツを持つ子どもたちが、自身の民族文化を自然に受け入れ、出自を明らかにできる社会こそ多文化共生社会である。そうなるためには、日本人の意識を変えていかなければならない。その教育の場としての異文化体験であり、「ワールドハッキョ」はその一助となっている。

 「ハギハッキョ」と「ワールドハッキョ」が両輪となり多文化共生教育を進める体制づくりが、すべての自治体で行われることを、今後の教育課題として目指したい。

 次に長年の課題である市民権の獲得である。その代表的な地方参政権獲得運動は現在、暗礁に乗り上げ、見通しが立たない状態にある。この運動をもう一度、新たな価値観のもとに再構築して推進していく必要がある。その一つが国際法の活用にあると考える。「市民的及び政治的権利に関する国際規約(27条)」は、あらゆるマイノリティーはマジョリティーと同じ権利をもつと明記している。この精神をもって、参政権を要求していく。そのための理論構築を今後していかねばならない。また、一方で、日本国籍を取得し、在日社会の支援を受けて積極的に政治に参加していくという運動もこれからは必要ではないだろうか。すでに日本国籍を取得している在日を結集し、韓国系日本人(コリアンジャパニーズ)として〝在日党〟などの党を結成し、選挙に臨み、議員を生みだしていく。そうすることで、議会に政治に在日が影響力を持っていくのである。いずれにしても、在日が日本の政治に積極的に参加し、影響力をもつための運動を構築するべきだ。無権利の隷属状態から脱却して、普通の市民になるために。

 以上、私がいま在日にとって、ひいては日本社会の民主化にとってもっとも必要であると考える「教育」と「市民権獲得」について持論を述べた。異論もあると思うので、これからもKMJや私の活動の基盤である韓国民団内で積極的に議論し、深化させていきたいと思う。(呉時宗・KMJ副理事長)