Black Lives Matter   Korean Lives Matter Too - 一般社団法人在日コリアン・マイノリティー人権研究センター

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Black Lives Matter Korean Lives Matter Too

【投稿日】2020年9月23日(水)

 テニスの4大大会、「全米オープン」において、大坂なおみ選手が見事2回目の優勝を果たした。賞賛すべきはその優勝以上に、プロスポーツ選手という立場で人種差別・人権問題に立ち向かったことである。大坂選手はそのプレ大会の準決勝を人種差別への抗議の意志を込めて棄権(のちに大会側が理解を示し、出場)。「全米オープン」では人種差別犠牲者たちの名前を入れた黒いマスクを一試合ごとに着用し(決勝までの七試合、7名分)、人種差別撤廃へのメッセージを発信し続けた。

 一般的に、スポンサー契約を受けているプロスポーツ選手は、スポンサーの意向に背くような行為はしないし、できない。政治活動はもとより、反差別運動などはもっての外だろう。しかし大坂選手は、プロスポーツ選手は、スポンサーから受けている経済的な支配や契約を超越し、毅然とした態度を取るべき時がある、という覚悟を行動で表した。ましてやそれが自分自身のことであるから、なおさらだ。「プロスポーツ選手が政治活動にかかわるべきではない」との批判に対し、大坂選手は自分は黒人女性であり、「これは人権問題である」と毅然とした態度を示した。大坂選手自身も、日々、人種差別に曝され、命の危険を感じているのである。だからこそ“Black Lives Matter”(黒人の命は大切)を訴えるのだ。当然の主張である。彼女のこの勇気ある行動は、人権が蔑ろにされているこの世界を大きく揺るがし、そして世界中で賞賛を受けた。

 一方で、日本では冷ややかな声やバッシングの声が多い。SNSでは「スポーツに政治を持ち込むな」、「テロや略奪を支持するのか」(Black Lives Matter運動を指す)といった批判や、「日本人じゃない」などというヘイトスピーチが投げつけられている。大坂選手の日本企業スポンサーも、多くが冷ややかな反応だったという。また、自民党の松川るい議員が大坂選手の行動を賞賛するツイートをしたところ、自民党支持者などから猛烈な批判を受けたという。松川議員はそのツイートを削除し、謝罪に追い込まれた。差別を是認する自民党の体質と言ってしまえばそれまでだが、その体質は日本社会全体が創りだしているのである。その背景には何があるのか。

 日本には「人種差別」などない。大坂選手の行動に対して、このフレーズをよく耳にする。そうまさにこれである。日本社会に「人種差別」などあってはいけないのである。日本人は穏やかで、勤勉で、寛大で、「スゴク」なければいけないのである。そうでないと「誇り」をもてないのである。だから「人種差別」などあってはいけないのだ。
 
 ゆえに“Black Lives Matter”のような人種差別撤廃運動が盛り上がり、それを支持する者が増え、当事者が立ち上がることで、日本社会における「人種差別」が浮き彫りにされることを恐れているのである。だから私たち在日コリアンも「いない」ことにされてきたのである。大阪維新の会が大阪都構想の住民投票から、LINE証券が口座開設から、在日コリアンを排除しても、彼等はなんとも思わないのである。なぜなら、在日コリアンはいないことにされているから。「人種差別」などないから。その一方で、在日コリアンはヘイトクライムなどで命の危険に曝されている。だからこそ、私は主張し続ける。“Korean Lives Matter Too”と。(高)