能登半島地震により被害に遭われた皆さまへ 心よりお見舞い申し上げます - 一般社団法人在日コリアン・マイノリティー人権研究センター

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能登半島地震により被害に遭われた皆さまへ 心よりお見舞い申し上げます

【投稿日】2024年2月1日(木)

そして今年も民族差別を解消するための施策・法整備を粘り強く求めていきます

 2024年1月1日に発生しました石川県能登地方を震源とする能登半島地震によりお亡くなりになられた方々に謹んでお悔やみ申し上げますとともに、被災された皆さまに心からお見舞い申し上げます。また現地で懸命に救助活動をされている皆さまに心より敬意を表します。

 さて残念ながら今回も地震後に、X(旧ツイッター)などのSNS上でさまざまなデマが流布されました。中には偽の救助要請があり、警察や消防が出動するといった事態も起きたようです。大きな災害時は偽情報が拡散されやすく、朝日新聞によると、今回は特に表示回数やフォロアー数が収益に繋がるSNSの仕組みが広範な流布の一因となっていると分析しています。また、災害時は「伝えなければ」といった心理から怪しい情報でも拡散されやすいとも言われています。そして被災者はそのようなデマを信じやすいという調査研究があります。いずれにしましても、デマの流布は被災された方々の不安を煽り、助長する許されざる行為です。

 そして、今回も根拠を何も示さず「外国人窃盗団が能登半島に集結している」、「組織で動いている。全国から集まっている」といったデマがXなどで流布されました。それらは400万回以上閲覧されたようです。被災地では実際に窃盗の被害は出ていて、注意が呼びかけられていますが、石川県警察本部によりますと、能登地方でこれまでに「外国人の窃盗団」は確認されていないということです。

 Xでは、ほかにも外国人による炊き出しを「怪しい」と疑ったりする投稿や、「井戸で水を飲む方は毒に気をつけて」と、関東大震災時の朝鮮人虐殺のきっかけになったデマを意識したとみられる悪質な投稿もみられています。「外国人の窃盗団がいる」などという根拠不明の情報は東日本大震災のときにもみられ、実際に自警団を名乗る集団が東京を出発し、石巻で中国人を捜しまわりました。そして、見つけ次第、容赦なく殺害すると宣言していました。幸いそのような事件は起こりませんでしたが、石巻には外国人実習生が多く住んでいたことから、彼/彼女らが暴行などの被害に遭うという可能性もあったわけです。

 今回のデマについては、早い段階でマスコミに取り上げられ、法務省人権擁護局も「不確かな情報に基づいて、偏見や差別を助長するような情報の発信は重大な人権侵害や避難、復興の妨げにもなりかねない」として、冷静な対応を呼びかけました。これまでの大災害の教訓が活かされたのではないでしょうか。そしてデマの投稿は、罪に問われるようになりました。麻貴弁護士(大江戸綜合法律事務所)によると「SNS上でデマを流すことで、意図的でないにせよ、他人の社会的評価を低下させ、経済的信用を毀損し、又は業務を妨害してしまうおそれがあります。そのような場合、投稿者は、名誉毀損罪、信用毀損罪、業務妨害罪といった犯罪行為に該当し、刑事罰に処せられる可能性がありますし、民事上も、不法行為に基づいて損害賠償責任を負う場合があります。リツイートによってなされたTwitter上の投稿について不法行為責任が認められた裁判例もあ」るとのことです。

 しかしながら、これらの対応でもまだまだ不十分です。「外国人犯罪」や「朝鮮人が井戸に毒」などのデマ流布の背景には、明確に民族差別、偏見があるからであり、それらを解消していかないかぎり、今後も流布され続けるでしょう。国が民族差別の存在を明確にし、それらを解消するための「外国人人権基本法」や「民族差別撤廃法」などの法整備をやっていかなければ解消されません。啓発活動だけでは不十分であることは、現状からも明らかです。

 残念ながら、昨年の関東大震災100年の節目の年に、国や東京都は朝鮮人虐殺については、曖昧な態度に終始しました。ややもすればそれらをなかたことにしようとする態度を示していました。そのような態度、姿勢がデマを助長しているのです。
 今回の大震災によるデマの流布を受けて、KMJでは改めて民族差別解消のための、施策・法整備の重要性を確認し、それらを粘り強く求めていく関東大震災時朝鮮人虐殺101年目の2024年にしたいと思います。