2014年をどんな年にしていくか 理事長 仲尾 宏 - 一般社団法人在日コリアン・マイノリティー人権研究センター

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2014年をどんな年にしていくか 理事長 仲尾 宏

【投稿日】2014年1月6日(月)

 実質化改憲状態

 2013年、安倍内閣は政権獲得時に声高に叫んでいた憲法改悪については、提示した自民党改憲案のあまりのひどさ、ずさんさに対する世論の反発を避けて、改憲手続きを容易にする一部改憲の先行案の提示、さらにそれも勝算がないとみるや、改憲を直接の政治課題にすることを避けて、実質化改憲状態をつくりだすことに精を出しました。

 大本営NCS、特定秘密保護法、情報統制

 それは日本版NSCと言われる実質的な大本営の設置、情報統制のためのNHK経営委員の人事、さらに特定秘密保護法の制定をめざしたことです。この法は戦前の軍事機密法にも匹敵します。さらにその先には共謀罪や治安維持法の制定をめざす破壊活動防止法の改悪がまちかまえているでしょう。もうひとつ気掛かりなのは「改正教育基本法」の実質的適用をめざして、教科書検定制度と教科書の内容の全面的改定をめざしていることです。

 「両論併記」歴史の改ざん

 新聞報道では「両論併記」などと、一見もっともらしい理屈をもちだしています。しかし、その意図はいわゆる「つくる会教科書」の内容をすべての検定教科書にもちこむことでしょう。そうなると、「侵略」と「進出」の併記、「韓国併合」の結果、日本は朝鮮半島によいこともした、朝鮮人はみずからの意思で本土に渡ってきた、「従軍慰安婦」も自分の意思で応募した人もいた、などという記述が登場するでしょう。そして教師はそのことを少なくとも、「両論併教」しなくてはならなくなります。人間は自分の周辺に起こった過去のできごとはなるべく差し障りのないように解釈したい習性がありますから、多くの生徒、学生は大日本帝国時代はよかった面もあったのだ、という解釈をするにちがいありません。このようにして歴史は修正され、ことの真実は闇に葬りこまれていきます。

 ファミリーヒストリーを残そう

 いま、大事なことはこのような日本社会の体制と大勢に徹底してあらがうこと、ひとりの人間として、後世の人から、あの時代の人びとは何をしていたのか、と指弾されない生きかたを貫き通すことでしょう。そこで私は在日の人びとにお願いしたいことがひとつあります。それはそれぞれの方々のご家族の歴史と体験をできるだけ詳しく残すことです。これはどんな方にもできることでしょう。語りでも、録音でも、また筆記でも、写真でも結構です。20世紀後半、異郷でくらすことになった歴史と真実を自分たちの子孫に伝えておくこと、同時にこれからの日本の若い人びとに間違いなく伝えておくことが大切だと思います。そのことが、歴史の真実を伝え、体験を風化しさせない第一歩ではないか、と感じます。きびしい新年ですが、私たちにできることはまだまだあります。日本人は勿論のこと、民族のちがいをこえて、一つでもよりよい未来のための行動をおこしましょう。