スポーツ界の国際化と白鵬の日本国籍 - 一般社団法人在日コリアン・マイノリティー人権研究センター

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スポーツ界の国際化と白鵬の日本国籍

【投稿日】2019年10月10日(木)

 2020年の東京オリンピック開催が近づくにつれて新聞、テレビなどのマス媒体での報道は日を追って過熱している。そのことにいちいち文句をつける筋合いはないが、選手の国際化は著しい。テニスの大坂なおみ選手が登場したときなど、彼女は「果たして日本チームの選手なの?」と我が目を疑ったものだ。彼女以外にも日本を代表する優秀な選手の活躍は毎日のように映像や紙面を賑わしている。そのような現象は日本だけでなく、多くの国で自国以外の民族や他国からの移住民出身の選手が活躍している。このままでいくと競技種目によってはメダルを獲得する選手はすべて外国出身か外国に出自をもつ選手に独占される事態も生じるかもしれない。私はそれはそれでよいと思う。なぜなら出自の如何をとわず、厳しい周囲の日本人の目や環境のハンディキャップを乗り越えて必死の訓練を積み重ねてきたのだから。もう一面では彼・彼女らの活躍によって、マスコミがいかに「日本人の優秀さ」を誇り、ナショナリズムを煽り立てても、それは絵空事にすぎない言説であることを事実として証明してしまうからだ。多少の身体的条件や気候風土、練習環境の条件の違いがあっても、強い意志と鍛錬の積み重ねが少々の悪条件を跳ね返して勝者の栄冠をもたらせる原動力であることを証明する。その選手が日本国籍をもっているか否か、日本人の民族性の保持者であるか否かは、副次的な一面であるにすぎない。戦前のオリンピックのマラソンで金メダルを獲得した植民地朝鮮出身である孫(ソン)基(ギ)禎(ジヨン)選手、プロ野球の世界での王貞治、張本勲、金田正一ら、プロレスの力道山らの大活躍は大多数の日本人の記憶に今も鮮明に残っている。大相撲の世界でも横綱に昇進した朝鮮人の玉の海や三重ノ海、その他少なからぬ幕内力士の存在がある。

 さて今回、日本国籍を取得した白鵬のことを考えたい。モンゴル国出身、本名はムンフバト・ダヴァジャルガル(日本相撲協会による公式表記)の彼は近い将来の引退後にも日本の角界に貢献したいとして一代限りの親方株を取得するために必要な日本国籍を取得した。それは日本相撲協会の規程によるらしい。前例としてハワイ出身の元曙関(アメリカ国籍)などの例もあるという。ではなぜ親方株の取得に日本国籍が必要か、という問題は協会の人事管理の責任者はじめ、マスコミの取材者は一切無言である。親方とは協会の承認のもとで後進の指導にあたることを主たる役柄とされているらしいが、なぜ日本国籍者でないと勤まらないのか、ということが説明されていない。恐らくは相撲は日本古来の「国技」だから、という回答がかえってくるのだろうが、相撲の競技を「国技」とした法律はない。また似たような格闘技は日本だけに存在しているものでもない。お隣の朝鮮半島にも「シルム」がありモンゴルにもあるようだ。別の格闘技である柔道にしてもかつては日本独特の歴史と技を誇る競技であったが、今やその王者に日本の選手がならぶことは少ない。やがて相撲の世界でも日本人力士が相対的に減少するかもしれない。

 世の中は「令和」だとたいして意味のない大合唱が毎日のように繰り返されているが、もう少し頭を冷やしてこの日本国籍のことや元号の意味を考えたい。
                                                                   (理事長 仲尾宏)